インドの半導体・電子部品 2025最新動向
— 日本企業にとってのインドでの半導体・電子部品分野のポテンシャルと人材交流
設計+製造(ATMP/OSAT)+AI・自動化まで──政策・投資・人材の三位一体で前進するインド。日本企業がどう関わるべきかを、人材交流と拠点戦略の視点で整理します。
目次
1. インドの半導体・電子部品業界の流れ(2025時点)
これまでのインド半導体産業:設計は強いが、製造は弱かった
インドは長く「設計(デザイン)に強い国」でした。1970年代に国産化の試みはあったものの、本格的な量産産業には育たず、ファブレス設計/ソフトウェア/人材供給が主役という構図が続きました。
国内のエレクトロニクス需要は拡大する一方、半導体や電子部品の多くを海外に依存。設計は国内、製造や後工程(組立・検査・パッケージ)は海外という分業で、輸入でまかなうのが実態でした。
転機:インド政府による半導体産業への投資
India Semiconductor Mission(ISM)やDLI(Design-Linked Incentive)などの政策で、設計だけでなく製造(ファブ)や後工程(ATMP/OSAT)まで国内に呼び込む方針へ。設計→試作→量産の“国内パス”を太くする狙いです。
いま、立ち上がるインド国産の半導体産業
- Tata Electronics × PSMC:グジャラート州ドレーラで28–110nm帯の量産ファブ建設を推進。周辺でサプライヤー・人材の集積を見込む。
- Micron(サナンド):グジャラート州サナンドのATMP(組立・検査)工場を段階立ち上げ。検証→量産へ順次移行予定。
- その他の新規案件:先端というより成熟世代の製造/ATMPを中心に複数計画が進行。政策枠組みのもとで案件選別と加速が同時進行。
- 設計エコシステム:DLI採択が拡大し、監視・スマートメーター・ネットワーク向けSoC等の国産設計が増加。
要点:
- これまで:半導体はほぼ輸入。設計は国内に強みがあった。
- いま:政府後押しで、まずATMPと成熟世代の製造から国内化を開始。
- これから:設計→試作→量産(組立・検査)の国内ルートを整備し、輸入一辺倒からの脱却へ。
- 拠点:バンガロール/ハイデラバード/グジャラートを中心に、人材・インフラ集積が加速
「これまで海外に頼っていた“作る工程”を、インド国内にも少しずつ作っている最中」です。最初に立ち上げやすいのは超微細ではない“成熟世代のチップ”や、最終工程(組立・検査)。ここから人材・設備・供給網を育て、次の段階に進むという流れで前進しています。
3. JBICによる支援強化と資金の追い風
日本政府は対印官民投資5兆円(おおむね2022–2027)を表明。さらにFOIP(自由で開かれたインド太平洋)新プランとして2030年までに総額約750億ドル規模の資金動員を掲げています。これらの実行においてJBICは融資・保証・スキーム設計で中核を担い、サプライチェーン強靭化を目的とする枠組みで半導体・電子部品の設備投資/ATMP/設計センター整備等を後押し可能です。在印日系団体との「半導体委員会」設置など、案件形成を加速する動きも広がっています。
ポイント:制度金融+民間金融のハイブリッドで、前工程~後工程~設計まで広く資金が入り得るフェーズ。
4. 日印協業のポテンシャル
2023年、MeitY(インド)–METI(日本)間で半導体サプライチェーン協力のMoC(5年間)が締結。G2G×B2Bの橋渡し枠として、次の4本柱で実務を前進させる計画です。
- 人材育成・交流:設計(EDA/RTL/DFT/検証)、製造(FE/BE)、装置・材料、品質・信頼性の研修・相互受入。共同カリキュラム/短期集中ブートキャンプ/インターンで“学ぶ→現場”を直結。
- 研究開発協力:SiC/GaN等のパワー半導体、アナログ/ミックスドシグナル、先端パッケージ(OSAT)で共同研究・PoC。評価環境の相互活用や標準化への参画。
- 投資促進・制度対話:インセンティブ・税制、装置・材料の相互供給、輸出管理・認証の整合化に向けた継続対話。
- 産業エコシステム構築:日系装置・材料・IPベンダーの現地参画と、インド側の設計・後工程の垂直連携を促進。
❙ 東京エレクトロン(TEL)×Tata Electronics:装置×ファブの実装連携
東京エレクトロン(TEL)とTata ElectronicsのMoUにより、ドレーラ(グジャラート)の初ファブやジャジロード(アッサム)のATMPに向け、装置インフラの立ち上げ・運用で協力。装置サプライヤーが建設初期から関与することで、歩留まり・保守・人材育成を同時並行で整え、立ち上がり速度を高めます。
日印関係は「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」として位置づけられており、FOIP新プラン/対印5兆円枠などの制度・資金の後押しにより、経済安全保障(供給網の分散・強靭化)の観点からも“日本×インド”の分業ネットワークを組みやすい環境が整っています。
5. 半導体分野の人材交流/採用でGlobal Career Lab がサポート出来る事
政府間MoCを土台に、大学・研究機関・企業を横断した人材循環が期待されます。Global Career Lab(GCL)は、以下の“実現可能な交流パターン”をワンストップで実装します。
A) エンジニア人材の採用(新卒/経験者)
- 対象:回路設計・レイアウト設計、アナログ/ミックスドシグナル、パッケージ・実装、テスト開発、組み込みSW、品質・信頼性。
- 供給源:IIT/IISc等の上位大、主要GCC、設計ハウス(英語標準/日本語N3以上も紹介可)。
- 弊社の支援内容:職務定義→サーチ→面接設計→オファー調整→ビザ・日本語教育・生活立ち上げ。
B) 大学での共同研究(採用直結型)
- スキーム:IIT Hyderabad等と共同テーマ(例:先端パッケージ、SiC/GaN評価、EDAフロー自動化)。
- 成果:論文・特許・PoC創出と並行し、参画学生を長期インターン→採用へ直結。
- 弊社の支援内容:大学折衝、知財・成果物取り決め、KPI運用、採用イベント運営。
C) 大学での寄附講座(採用ブランディング)
- 内容:企業名冠の講座で実務直結シラバス(例:DFT演習、信頼性評価、製造×設計連携)。
- 効果:上位学年の優秀層へ継続露出し、演習→インターン→内定の王道ルートを構築。
- 弊社の支援内容:講座設計・講師アサイン・課題作成・成績連動インターン選抜・現地運営。
D) インドでのソフトウェア系GCC立ち上げ
- 対象:EDAツール開発/自動化、テスト自動化、製造データ解析、品質・セキュリティ基盤、社内生成AIの横断適用。
- 拠点候補:ハイデラバード/バンガロール/プネ/チェンナイ(テーマ別に適地選定)。
- 弊社の支援内容:都市診断→採用設計→初期コア採用(10–50名)→オンボーディング→大学連携の増員パイプ整備。
❙ まとめ:
インド半導体のこれまでと現在
- これまでは、設計・ソフトは強い一方、製造や後工程は海外依存(=完成品を輸入)していた。
- 現在は政府の後押し(ISM/DLI)で、まずATMPと成熟世代の製造から国内化を開始。Tata×PSMC(製造)やMicron(ATMP)など旗艦案件が動いている。
日本への協業の期待(政策×資金×安保の追い風)
- 政府間MoC(MeitY–METI)で人材育成・R&D・投資促進・制度対話を日印で同時並行に進められる。
- 「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」やJBICのファイナンスを背景に、供給網の分散・強靭化の面でも分業が組みやすい。
日本企業にとって、インド企業・インド人材とコラボする魅力
- 人材の厚み:VLSI設計、検証、組込み、データ/AI、品質・信頼性など英語で即戦力の層が広い。
- スピードとコスト:短期間でチーム編成・拡張が可能、24/7の開発体制も構築しやすい。
- 大学連携:共同研究→長期インターン→採用の“採用直結ルート”を常設化できる。
- 市場近接:車載・電力・通信・産業機器の現地課題に近接し、“使われる技術”を磨ける。
- BCP/セカンドソース:ATMPや成熟ノードの能力確保で地政学リスクを分散。
Global Career Lab(GCL)が支援できる×インドの人材交流/採用
- エンジニア採用(新卒・経験者):VLSI/検証/アナログ/パッケージ/テスト/組込み/品質の職種別に、要件定義→サーチ→面接→オファー→ビザ・日本語教育・生活立上げまで一貫支援。
- 大学連携(採用直結):共同研究テーマ設計、寄附講座の開設、長期インターン運用、KPI設計、採用イベント運営。
- GCC立ち上げ採用:都市診断→採用設計→初期コア(10–50名)→オンボーディング→大学連携パイプの恒常化。
- ソフト/自動化の横断人材:EDAフロー自動化、テスト自動化、製造データ解析、社内生成AI基盤の横断適用人材を確保。
現在のインドは、海外依存だった“作る工程”の国内化を実プロジェクトで動かし始めた段階です。政策・資金・安保の追い風がそろった今、日本企業は「研究・採用・量産」を一つのプロジェクトとして見据えたプルセス(大学連携→インターン→採用→量産連携)を設計し、インド企業・人材との協業を具体化する好機です。
Global Career Labは検討段階から立ち上げ・採用までをワンストップで支援します。